実験装置制御のためのバス 安 芳次、高エネルギー加速器研究機構 実験装置制御のためのバス(リンクを含む)をめぐる情勢は大きく変化してい る。特にシリアルリンク技術の急速な発展の結果、さまざまな装置がシリアルリ ンクで接続されるようになった。産業用バスとしていままで用いていたVMEや CompactPCIなどはテレコムなどではいまやシリアルリンク技術に代わろうとして いる。つまり、CompactPCIを推進してきたテレコム分野がCompactPCIを廃し高速 シリアル技術を利用するAdvanced TCAを採用した。私の発表では、バス・リンク の動向を規格開発の視点でまず整理し、VME、PCI、シリアルリンク技術の現状を 把握する。 一方で、大規模データ収集システムの現状を示すことで現実のニーズを的確に押 さえる。具体的には、LHC/ATLAS実験を例に、そのデータ収集システムに使用さ れようとしているバス・リンク技術を紹介し、データ収集ネットワークの詳細を 分析する。 次に新しい開発事例として、KEK標準Copperシステムと大阪大学のSpaceWireを用 いたデータ収集システムを紹介する。前者はKEKオンラインエレキグループが提 案しているネットワークベースのデータ収集システムで、9Ux400mmボードにPCI バスを載せFINESSEと呼ばれるADC/TDC等のメザニンカードやプロセッサを載せた PMCボードなどがサポートされる。後者は簡単なスペックのシリアル技術である SpaceWire規格を利用したデータ収集システムで、気球実験に使用している。ま た、SpaceWireを外付けにした電源のみをサポートするクレートも提案している。 最後に、重要と考える3つの技術(LVDS, SpaceWire, Advanced TCA)を紹介 し、それらを使ったシステムの可能性について語る。まずは、すでにKEKが東陽 テクニカ社と共同開発したパイプラインCAMACコントローラがメッセージベース のアーキテクチャを採用することで、世界最高速のスピードを実現できたばかり でなく、そのアーキテクチャがシリアル技術にマッチした技術であることを示す。 次に、PCI/SpaceWireインターフェースの開発現状を示し、その延長上に既存のモ ジュールを有効利用するための並列CAMACシステムや並列VMEシステムの可能性、 さらに新しい並列ReadOutSystemの可能性について述べる。